2017年7月4日火曜日

悪気はないんです


夕暮れ時、山道を車で運転していると
左車線を走る(日本なら絶対当たり前のルール)私の目に

見たことのない点滅ライトが、
緩やかに移動しながら
ピッカ、ピッカとこっちに向かって光っているのが見えた。

真っ暗でもなく
明るくもなく
運転手からすると、ものすごく辺りの様子が見えにくい時間帯。

やっぱりなにか、こっちに向かって動いてくる。
ピッカ、ピッカと
近づいてくる。

なんじゃい。
わけわからな過ぎて
何の物体なのか、想像がつかな過ぎて
とにかく減速。

なんか、見ちゃいけないものが見えたんじゃねーの?
ホントは見えないはずのものが、私にだけ見えてるとか
そんなんじゃございやせんように・・・。

減速した私の車に
点滅ライトが近づいてくる。


50㎝くらいしかない、左側歩道。
歩道とは消して言えないほどの狭さで
その歩道と車道の境界線である白線を
ちょうど中心線に跨ぐようにして

何かの物体がこっちに向かって動いている。


目を凝らした。
あと10mで正体が判明する。

そいつと、
さぁすれ違う。























「出かけるたびに、心がはずむ」



言うてる場合か。




正体は、この心はずむ(らしい)乗り物でした。


麦わら帽子被った
どっかのばーちゃんが

すっごい穏やかな顔で

すっごい涼しげな表情で


大爆走中。


しかも


大逆走中でございやした。







なんかさぁー。

危なすぎて、ホントだったら
というか
いつもだったらブチ切れてるところなんだけどさぁー。



あぁ。
これか。


あたしはいっつも
これくらいの事でブチ切れてんのか・・・

なんて思ってしまって、

独り不気味に
フフフフフ・・・・と笑いが止まらなくなってしまったのであります。




なんかいっつもどっかに必ずいる困ったちゃん。

自分主義の押し付けが激しくて
了見の狭さが故に
人を巻き込んで引っ掻き回すヤツとか

何にも頑張ってないヤツに限って
人の文句言って回るヤツとか

愚痴ばっかで何にもしないで踏ん反り返ってるヤツとか

うわさ話大好きちゃんとか

あいつがどーだ
こいつがどーだ
とかが全身を埋め尽くしてるヤツとか




あたしはいちいち
いちいち
いちいち
いちいち


そういうのに怒り爆発してるねー。

「許せん!!」
「マジ許せん!!」
「なんじゃそりゃーー!!!」
「とにかく何かやれ!!!」

って
いっつも怒りで充満してる。



でも、
大逆走中のばあちゃん見て思ったよ。


「悪気はないんですね」
「はい、まったく」
「悪気はないんです、このばーちゃん!」
「ほら見てごらんなさいよ、あの涼やかな顔を」



自分主義の押し付けが激しくて
了見の狭さが故に
人を巻き込んで引っ掻き回すヤツも

何にも頑張ってないヤツに限って
人の文句言って回るヤツも

愚痴ばっかで何にもしないで踏ん反り返ってるヤツも

うわさ話大好きちゃんも

あいつがどーだ
こいつがどーだ
とかが全身を埋め尽くしてるヤツも



それも
これも
どれも


この
心おどる乗り物に
お澄まし顔のばーちゃんと

なーんも変わらーん!!




フフフフフ・・・・・。





すれ違った。

バックミラーでばーちゃんは
発見時より
より小さく見えた。

そして、自宅であろうと思われる家に
ウインカー出して入ってった。



ウインカーは出せるんだ・・・。
良かった。

ピッカ、ピッカ
って光るヘッドライトもちゃんと点灯してたし
操作はちゃんとできるんだし
一応、この電動カートって歩行者扱いらしいしね。




もう、これしきの事で
あたしはブチ切れたりしないよ(うにしよう)!

それは相手が年寄りだからじゃない
悪気がないのが分かるからじゃない
許せる人にならなければならないとかそんなんじゃない


怒る対象にすらならないということが


電動カートに乗るばあちゃんの姿で
明確に分かったからだよ。

困ったちゃんたちも
この電動カートに乗るばあちゃんの姿と
なーんも変わらんことが
めっちゃ明確に分かったからだよ。


横目でスルーだ。

いちいち怒る必要なんて
元々どこにもなかったんだ。

あたしはあたしの道を
しっかり
おもいっきり
ちゃんと

進んで行くだけなんだわー。








(と、執拗に自分に言い聞かせる・・・。)